2015年6月17日水曜日

60.グル(गुरुः [guruḥ])- (自分の本質の正しい知識を教えてくれる)先生、木星

गुरुः 
[guruḥ]

masculine - (自分の本質の正しい知識を教えてくれる)先生、木星



グルとは


現代では、音楽や舞踊そしてヨーガや瞑想の先生もグルと呼ばれますが、

伝統的には、下記のシュローカ(詩節)にある意味が示すように、

自分の本質の正しい知識について教える先生が、グルと呼ばれます。


गुकारस्त्वन्धकारो वै रुकारस्तन्निवर्त्तकः ।
gukārastvandhakāro vai rukārastannivarttakaḥ |
अन्धकारनिरोधित्वाद् गुरुरित्यभिधीयते ॥
andhakāranirodhitvād gururityabhidhīyate ||

gukāraḥ(グの音)vai(まさに)andhakāraḥ(暗闇)
tu(一方)rukāraḥ(ルの音)tannivarttakaḥ(その暗闇を追い払う者)|
andhakāra(暗闇と)nirodhitvād(相反するものであることから)
guruḥ(グル)iti(として)abhidhīyate(呼ばれています。) ||


「グ」の音は「暗闇」を表し、「ル」の音はそれを追い払うもの(光)を表す。

「グル」とは、暗闇(無知)に反するもの(知識の光)を表すことから、

(そのような人、つまり先生は)グルと呼ばれる。


自分の本質の正しい知識とは


自分の身体や心については、ある程度のことは誰でも知っています。

そして、自分とは身体のことだ、とか、自分とは心のあり方のことだ、

と自分の本質を身体や心と取り違えています。

なぜかと言うと、自分の身体や心を見続けている、

本当の自分、自分の本質は、暗闇の中に隠されているからです。

ちょうど、暗い映画館で、銀幕の中の世界にのめり込み過ぎて、

ヒーロー/ヒロインを自分自身だと取り違えている人のようです。

自分自身のことは、真っ暗なので分からないのです。

この自分自身に対する無知の暗闇が「グ」です。

それを取り払ってくれる光が「ル」です。

光と暗闇は相反するので共存できません。

同じように、知識と無知は相反するので共存できません。

無知を追い払いたければ、知識しかないのです。

その知識を教えてくれる人のみが、グルと呼ばれるのです。


グルについてのもうひとつのシュローカ


गुरुर्ब्रह्मा गुरुर्विष्णुर्गुरुर्देवो महेश्वरः ।
gururbrahmā gururviṣṇurgururdevo maheśvaraḥ |
गुरुरेव परं ब्रह्म तस्मै श्रीगुरवे नमः ॥
gurureva paraṃ brahma tasmai śrīgurave namaḥ ||

guruḥ(グルは)brahmā(創造主ブランマージーである)
guruḥ(グルは)viṣṇuḥ(この宇宙を維持しているヴィシュヌである)
guruḥ(グルは)maheśvaraḥ(マヘーシュヴァラ、シヴァ)devaḥ(神である)
guruḥ(グル)eva(こそが)paraṃ brahma(絶対的本質である)
tasmai(その)śrīgurave(グルに)namaḥ(私の尊敬を示します)

グルって、私に教えてくれる先生なんだから、人間じゃないの?

このシュローカでは、絶対神!みたいな名前のオンパレードです。

グルと呼ばれている、身体を持った人間が、

それらが全ての神々だという意味のシュローカです。

これってどういう意味なのでしょうか。

3人揃って。

ブランマー、ヴィシュヌ、シヴァという三大神は、

見え方は3つそれぞれ別々ですが、本質はひとつです。

ひとつであるゆえに、他のものがない事から、その本質は絶対的本質です。

それぞれ異なる見え方は、相対的なものであり、それゆえに本質ではないのです。

ブランマーも、ヴィシュヌも、シヴァも、ここにある全てのことなのですから、

それらの本質が、ひとつの絶対的な本質なら、

それは、グルという人間の本質でもあるはずです。

ゆえに、このシュローカ「グルはブランマー、グルはヴィシュヌ、、」なのです。

そして、その本質は、私の本質でもあるはずです。

それを教えるのがグルの役目なのです。


神様とグル、どちらが優先?


同じ内容で、インドではこの話が良く知られています。

「先生とヴィシュヌが同時に自分の前に現れたら、

先にどちらに対してナマスカーラをするべきか?

答えは、先生。なぜなら、ヴィシュヌが誰なのか、その本質は何なのか、

を教えてくれるのは先生だから。

先生にナマスカーラをして教えてもらって初めて、

ヴィシュヌにも全てにもちゃんとナマスカーラが出来るって訳なのです。


木星もグル



太陽系の惑星の木星も、グルと呼ばれています。

木曜日は、グル・ワーサラ(गुरुवासरः [guruvāsaraḥ])と言います。

木星は太陽の周りを一周するのに12年かかります。

同じように、なにか習い事をする場合、ひとつの周期は12年と考えられています。

なんでも気長に、ですね。

木星は、結婚している女性の守り神でもあります。



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